近年、にわかに注目を浴びている現象として「リーキーガット症候群」というものがあります。これは、2020年5月現在、正式には「疾患」として認められていないものの、各種論文に記載があったり、その他疾患の発生までの流れを説明する際にしばしば用いられるロジックです。
腸内環境や菌ケアと深いつながりがあり、実際、下川が在籍していたクリニックでは専門に扱っていた内容です。
KINSにご興味をお持ちくださった皆様には是非ぜひ知っておいていただきたい内容なので、こちらの記事でまとめることといたしました。少々難しい面もあるかもしれませんが、ご一読いただけますと幸いです。
リーキーガット症候群とは
リーキーガットとは、「漏れる」という意味のリーキー(leaky)と「腸」という意味のガット(gut)の2つの語句が組み合わさった言葉であり、日本語では「腸もれ」と訳されることもあります。
ある一定の条件が揃うと腸の細胞と細胞のつながりが緩んでしまい、そこから腸の内容物が文字通り「漏れる」状態のことを指します。
口から食道、そして胃、腸、肛門は全て繋がっています。その意味では「消化器官」は、血管や筋肉、心臓や脳などの臓器と異なり「外部からの侵入物」に対して直接触れてしまう器官です。
そのため、消化器官には腸内細菌をはじめ様々な菌や毒素、異物が常に存在している状態です(脳や心臓、血管には通常、菌は生息していませんよね?)
胃や腸はこうした外部の「体にとってよくないもの」が体の内側に入り込むリスクを防ぎつつ、有益な栄養素だけを取り込んでいます。
が、リーキーガットを起こしていると、細胞と細胞の隙間から腸の中にある「食べ物の細かい成分」「菌」「悪玉菌が出した毒素」が血管の中に漏れ出してしまい、体の中を回ることになります。
当然、本来入り込んではいけないものを取り込んでしまうことになるので、体のあちこちに不調が現れてしまいます。
体に現れる(可能性がある)症状
厳密には疾患と認められていませんので、「可能性がある」という表現にいたしました。ですが、以下に書くことは実際に論文内にて記載があったものとなります。
症状の例
・肌荒れ
・アレルギー
・花粉症
・便秘
・肥満
・生活習慣病
・精神病
・自己免疫疾患(自分の免疫が自分自身を攻撃してしまうもの)
リーキーガットを起こした結果、どこにどんな影響が現れるかは正確にはわかっていません。
漏れ出した毒素や菌が肌で悪さをする(ニキビ、アトピーなど)こともあれば、そのまま脳で悪さをする(鬱やアルツハイマー、気分の低下など)こともあります。
特にアレルギーをはじめとする免疫系への影響は顕著です。
本来あるべきではないものが入り込むことにより、当然それを排除すべく免疫機能が働きます。
リーキーガットの状態が長く続くことは、常に免疫に対してなんらかの刺激が行われていることと同義です。そのため、少しずつ少しずつ、免疫機能に異常が現れます。腸内では「食べ物=栄養」として認識されていたものも、想定外の状態で体内に入り込むと免疫が働き「抗体」が作られます。
すると、次にその食べ物が入ってきた時に過剰に免疫が反応してしまい、アレルギー症状を引き起こす可能性が示唆されています。
他にも、身近な例で言えば花粉症。
昔はなかったのに、大人になってから出てきた……という方、要注意です。
慢性的なリーキーガット により、免疫が誤作動を起こし始めているのかもしれません。
リーキーガットが起きる原理と対処
リーキーガットを起こす原因として考えられているものは大きく二つあります。
・グルテン(小麦)の慢性的な摂取
・腸内細菌のバランスが崩れている
本来、腸の細胞と細胞はきっちりと閉じているのですが、これでは栄養素を体内に取り込むことができません。そこで「ゾヌリン」という物質がこの細胞のつながりを「適度に」緩め、栄養を体内に取り込みやすくしています。
しかし、グルテン(小麦)の元となる「グリアジン」というたんぱく質は、腸にたどり着くと「ゾヌリン」の分泌を活性化してしまいます。
慢性的な小麦の摂取により、ゾヌリンの分泌が過剰に活性化してしまうと、徐々に腸の細胞が緩んでいき、最終的には内容物が漏れ出してしまうのです。
ただ、腸内細菌のバランスが整っていれば多少小麦を食べたところで、このような現象は起きません。腸内細菌がしっかり生息しており、かつバランスの整っている方の腸内では腸内細菌が腸内の粘膜の形成を助け、グリアジンによる刺激から腸を守ったり、細胞の緩みの修復を助けてくれるからです。
もし、腸内最近のバランスが崩れている状態で慢性的な小麦の摂取があると、リーキーガットを引き起こす可能性が高まります。
*上記のような理由から、例えば感染症やピロリ菌除去のために「抗生物質」を飲んだ後(つまり、体内の菌を大きく殺菌した後)に発症することもあります。治療で抗生物質を飲んでから体調がなんだか優れない。ピロリ菌除菌をしてから性格が変わった。というケースをよく伺います。
対処法は原因として挙げた二つを極力改善すること。具体的には
・グルテンフリー
・菌ケア
の二つを実践することです。
グルテンフリーは小麦に含まれる「グルテン」を避けて生活すること。人によっては慢性的な肌荒れが、2週間程度のグルテンフリー実践でぐっと落ち着くこともあるようです。
▼グルテンフリーについては、こちらの記事を参考にしてみてください。
無理なグルテンフリーを避ける。最新の「グルテンカット」という考え方
キーワード:グルテンフリー
ただ、現代社会に置いて「小麦を一切食べない」のは、非常に酷というもの……
そこで「菌ケア」も併せて行うことが重要です。
特にリーキーガットの疑いがある場合は、腸内細菌のバランスが悪くなっている(または、そもそも数が少ない)可能性も、ひとつの側面として考えられるのです。
そこで、まずは手軽にできる方法として「善玉菌を生活に取り入れる」こと。
腸内細菌の中でもよい働きをしてくれる「善玉菌」を、発酵食品など普段の食生活からも取り入れていきましょう。
加えて、日々の生活を少しずつ見直すことが必要です。
例えば夜のラーメン。例えば頻繁な飲み会。例えば栄養の偏った食事……。
腸内細菌に悪影響を与える要因を、少しずつ除去することが重要。
これらの食事は悪玉菌を増やしたり、善玉菌にとって良くないとされるためです。
実際にKINS代表の下川も医療機関勤務時代、様々な原因不明の難病指定された患者様に対し、生活習慣の本格的な改善で快方に向かった例をいくつも見てきました。
腸内環境のためには、毎日の習慣改善は切っても切り離せません。
KINSと一緒にライフスタイルも見直しながら、菌にやさしい習慣を学んでいきましょう。
▼リーキーガットの原因となる生活習慣について知りたい方はこちら
リーキーガット症候群を改善させる生活習慣、悪化させる生活習慣について
キーワード:リーキーガット
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
今日も菌ケア、頑張っていきましょう。
[参考文献]
Chloe Terciolo. (2019.) Beneficial Effects of Saccharomyces boulardii CNCM I-745 on Clinical Disorders Associated With Intestinal Barrier Disruption
近年、にわかに注目を浴びている現象として「リーキーガット症候群」というものがあります。これは、2020年5月現在、正式には「疾患」として認められていないものの、各種論文に記載があったり、その他疾患の発生までの流れを説明する際にしばしば用いられるロジックです。
腸内環境や菌ケアと深いつながりがあり、実際、下川が在籍していたクリニックでは専門に扱っていた内容です。
KINSにご興味をお持ちくださった皆様には是非ぜひ知っておいていただきたい内容なので、こちらの記事でまとめることといたしました。少々難しい面もあるかもしれませんが、ご一読いただけますと幸いです。
リーキーガット症候群とは
リーキーガットとは、「漏れる」という意味のリーキー(leaky)と「腸」という意味のガット(gut)の2つの語句が組み合わさった言葉であり、日本語では「腸もれ」と訳されることもあります。
ある一定の条件が揃うと腸の細胞と細胞のつながりが緩んでしまい、そこから腸の内容物が文字通り「漏れる」状態のことを指します。
口から食道、そして胃、腸、肛門は全て繋がっています。その意味では「消化器官」は、血管や筋肉、心臓や脳などの臓器と異なり「外部からの侵入物」に対して直接触れてしまう器官です。
そのため、消化器官には腸内細菌をはじめ様々な菌や毒素、異物が常に存在している状態です(脳や心臓、血管には通常、菌は生息していませんよね?)
胃や腸はこうした外部の「体にとってよくないもの」が体の内側に入り込むリスクを防ぎつつ、有益な栄養素だけを取り込んでいます。
が、リーキーガットを起こしていると、細胞と細胞の隙間から腸の中にある「食べ物の細かい成分」「菌」「悪玉菌が出した毒素」が血管の中に漏れ出してしまい、体の中を回ることになります。
当然、本来入り込んではいけないものを取り込んでしまうことになるので、体のあちこちに不調が現れてしまいます。
体に現れる(可能性がある)症状
厳密には疾患と認められていませんので、「可能性がある」という表現にいたしました。ですが、以下に書くことは実際に論文内にて記載があったものとなります。
症状の例
・肌荒れ
・アレルギー
・花粉症
・便秘
・肥満
・生活習慣病
・精神病
・自己免疫疾患(自分の免疫が自分自身を攻撃してしまうもの)
リーキーガットを起こした結果、どこにどんな影響が現れるかは正確にはわかっていません。
漏れ出した毒素や菌が肌で悪さをする(ニキビ、アトピーなど)こともあれば、そのまま脳で悪さをする(鬱やアルツハイマー、気分の低下など)こともあります。
特にアレルギーをはじめとする免疫系への影響は顕著です。
本来あるべきではないものが入り込むことにより、当然それを排除すべく免疫機能が働きます。
リーキーガットの状態が長く続くことは、常に免疫に対してなんらかの刺激が行われていることと同義です。そのため、少しずつ少しずつ、免疫機能に異常が現れます。腸内では「食べ物=栄養」として認識されていたものも、想定外の状態で体内に入り込むと免疫が働き「抗体」が作られます。
すると、次にその食べ物が入ってきた時に過剰に免疫が反応してしまい、アレルギー症状を引き起こす可能性が示唆されています。
他にも、身近な例で言えば花粉症。
昔はなかったのに、大人になってから出てきた……という方、要注意です。
慢性的なリーキーガット により、免疫が誤作動を起こし始めているのかもしれません。
リーキーガットが起きる原理と対処
リーキーガットを起こす原因として考えられているものは大きく二つあります。
・グルテン(小麦)の慢性的な摂取
・腸内細菌のバランスが崩れている
本来、腸の細胞と細胞はきっちりと閉じているのですが、これでは栄養素を体内に取り込むことができません。そこで「ゾヌリン」という物質がこの細胞のつながりを「適度に」緩め、栄養を体内に取り込みやすくしています。
しかし、グルテン(小麦)の元となる「グリアジン」というたんぱく質は、腸にたどり着くと「ゾヌリン」の分泌を活性化してしまいます。
慢性的な小麦の摂取により、ゾヌリンの分泌が過剰に活性化してしまうと、徐々に腸の細胞が緩んでいき、最終的には内容物が漏れ出してしまうのです。
ただ、腸内細菌のバランスが整っていれば多少小麦を食べたところで、このような現象は起きません。腸内細菌がしっかり生息しており、かつバランスの整っている方の腸内では腸内細菌が腸内の粘膜の形成を助け、グリアジンによる刺激から腸を守ったり、細胞の緩みの修復を助けてくれるからです。
もし、腸内最近のバランスが崩れている状態で慢性的な小麦の摂取があると、リーキーガットを引き起こす可能性が高まります。
*上記のような理由から、例えば感染症やピロリ菌除去のために「抗生物質」を飲んだ後(つまり、体内の菌を大きく殺菌した後)に発症することもあります。治療で抗生物質を飲んでから体調がなんだか優れない。ピロリ菌除菌をしてから性格が変わった。というケースをよく伺います。
対処法は原因として挙げた二つを極力改善すること。具体的には
・グルテンフリー
・菌ケア
の二つを実践することです。
グルテンフリーは小麦に含まれる「グルテン」を避けて生活すること。人によっては慢性的な肌荒れが、2週間程度のグルテンフリー実践でぐっと落ち着くこともあるようです。
▼グルテンフリーについては、こちらの記事を参考にしてみてください。
無理なグルテンフリーを避ける。最新の「グルテンカット」という考え方
キーワード:グルテンフリー
ただ、現代社会に置いて「小麦を一切食べない」のは、非常に酷というもの……
そこで「菌ケア」も併せて行うことが重要です。
特にリーキーガットの疑いがある場合は、腸内細菌のバランスが悪くなっている(または、そもそも数が少ない)可能性も、ひとつの側面として考えられるのです。
そこで、まずは手軽にできる方法として「善玉菌を生活に取り入れる」こと。
腸内細菌の中でもよい働きをしてくれる「善玉菌」を、発酵食品など普段の食生活からも取り入れていきましょう。
加えて、日々の生活を少しずつ見直すことが必要です。
例えば夜のラーメン。例えば頻繁な飲み会。例えば栄養の偏った食事……。
腸内細菌に悪影響を与える要因を、少しずつ除去することが重要。
これらの食事は悪玉菌を増やしたり、善玉菌にとって良くないとされるためです。
実際にKINS代表の下川も医療機関勤務時代、様々な原因不明の難病指定された患者様に対し、生活習慣の本格的な改善で快方に向かった例をいくつも見てきました。
腸内環境のためには、毎日の習慣改善は切っても切り離せません。
KINSと一緒にライフスタイルも見直しながら、菌にやさしい習慣を学んでいきましょう。
▼リーキーガットの原因となる生活習慣について知りたい方はこちら
リーキーガット症候群を改善させる生活習慣、悪化させる生活習慣について
キーワード:リーキーガット
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
今日も菌ケア、頑張っていきましょう。
[参考文献]
Chloe Terciolo. (2019.) Beneficial Effects of Saccharomyces boulardii CNCM I-745 on Clinical Disorders Associated With Intestinal Barrier Disruption