掲載日 | 2023.08.28
更新日 | 2023.08.28

美肌菌にまつわる嘘?正しい知識で美肌を手に入れる

掲載日 | 2023.08.28
更新日 | 2023.08.28
注目のワード、「美肌菌」。調べれば調べるほど様々な情報が錯綜していて何が正しいのか分からない、と迷ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事は、誤って広まっている美肌に関する知識や噂、陥りがちな思い込みについて解説し、美肌菌について詳しく理解していただける内容をお伝えしていきます。

「美肌菌で肌がキレイになる」は嘘ではない

結論からお話しすると、美肌菌で肌がキレイになるという噂は、嘘ではありません。美肌菌は、美しい肌を作るために貢献する菌と考えられています。
まずは美肌菌を含む皮膚常在菌の種類や働き、性質を理解し、肌にとってどんな効果があるのかを見ていきましょう。

「美肌菌」と呼ばれる表皮ブドウ球菌(善玉菌)

誰の肌にも存在している皮膚常在菌のうち、肌にとって良い働きをする菌を善玉菌と言います。

なかでも表皮ブドウ球菌は皮脂や汗をエサにして保湿成分「グリセリン」と抗菌成分「脂肪酸」を生成するとされており(※1)、その性質から「美肌菌」と呼ばれています。

肌のバリア機能を保つ「グリセリン」と悪玉菌の増殖を抑えて肌を弱酸性に保つ「脂肪酸」。これらを作り出す表皮ブドウ球菌は、まさに美肌に役立つありがたい菌と言えますね。

アクネ菌(日和見菌)

アクネ菌は日和見菌といって、良い働きをするか悪い働きをするかは肌フローラの環境によって変わる菌と考えられています。

肌フローラが善玉菌優位にある時には善玉菌同様の働きをし、肌のバリア機能を保って悪玉菌の増殖を抑えるなど、美肌に貢献する働きをする性質があります。

その一方で、悪玉菌優位になると皮脂汚れで詰まった毛穴で増殖し、炎症やニキビの原因になると考えられています。 肌フローラのバランスを保てていれば味方にできる菌なので、善玉菌優位な環境づくりが鍵となります。

黄色ブドウ球菌(悪玉菌)

黄色ブドウ球菌も皮膚常在菌の一つです。しかし、増えすぎることによって痒みや乾燥といった肌トラブルの原因を引き起こす悪玉菌とされ、こうした肌トラブルとの関連性を指摘した研究も報告されています(※2)

私たちの肌表面には、肌トラブルを回避するために増殖を抑えたい悪玉菌もあれば、増やし育てたい美肌菌も存在しています。

この違いを理解せずに皮膚常在菌を一括りに洗い落としてしまう等の誤ったケアをしないためにも、正しい知識を身につけていくことが重要です。

美肌菌のはたらきについての嘘や誤解とは

ここからは、美肌菌について広まっている、思い込みや誤った情報についてまとめていきます。既に「常識」として定着してしまっているものもあるかもしれませんので、チェックしてみてくださいね。

「アクネ菌を100%殺菌したほうがいい!」は嘘

「アクネ菌はニキビのもとなので、しっかりと洗い落とすべき。一日に何度も洗顔をして、肌を清潔に保ちましょう。」

こういったイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実はアクネ菌は日和見菌といって、肌の環境次第では善玉菌的に肌に潤いを与えたりもする皮膚常在菌です。

増えすぎることでニキビの原因になることもありますが、過剰に洗い落とすことよりも肌フローラを悪玉菌優位にしない習慣を持つことが大切と言えます。

一日に何度も洗顔をすると、美肌菌に必要な皮脂までも洗い流してしまうことになり得ます。洗顔の回数は最低限にとどめると良いでしょう。

美肌菌と長風呂についての懸念

「半身浴は美肌に効果的」「長風呂をすると老廃物がたくさん出て肌が綺麗になる。」

こちらもよく耳にすることの一つで確かに良い面があると考えらえます。 ただ菌の観点からだと少し懸念も。 熱いお湯は皮膚常在菌にとってはダメージとなり、美肌菌を減らしかねないことと考えられています。

あくまで菌の観点からではありますが、ぬるめのお湯で15分くらいの入浴がおすすめです。(※4)

「何度も洗顔して清潔に」は間違いかも

「スクラブ洗顔やピーリング洗顔で肌の生まれ変わりを促進して美肌に。」

美肌菌は、肌表面の厚さ0.02mmの角層に棲んでいます。そのため、肌に摩擦を与えるスクラブ洗顔や角質を剥がす作用のあるピーリング洗顔を過度に行うと、美肌菌の棲み処にまで影響する可能性が

使用する洗顔料は、肌への刺激が少ないマイルドなものを使用すると良いでしょう。

美肌菌を守るための習慣

私たちの肌に元から存在している美肌菌。その力を最大限に活かすためにも、美肌菌を育て増やす習慣を心がけたいですね。スキンケアや生活習慣における、取り入れやすいコツをご紹介します。

美肌菌を守るためのスキンケア習慣2つ

美肌菌を増やすために、日頃のスキンケアで意識すると良いことをご紹介します。

1.洗顔では洗いすぎない

美肌菌を増やすためには、洗いすぎない洗顔が大切です。薄い角質層に棲んでいる美肌菌は、洗顔で簡単に洗い落とされてしまうほど、とてもデリケートです。

洗顔の回数が増えればそれだけ洗い落とされてしまう美肌菌も多くなってしまうことに。 ダブル洗顔を避け、洗顔の回数は最低限に心がけることをおすすめします。

2.化粧品の重ねすぎを避けシンプルに

良かれと思って手間をかけて塗り重ねた化粧品が、実は肌にとっての刺激となり、美肌菌を減らしている原因にもなりかねません。

市販の化粧品の中には、界面活性剤や防腐剤など、肌にとって刺激となる成分を含むものが多く存在します。こうした成分を塗り重ねれば重ねるほど、その刺激によって肌フローラのバランスを崩してしまう可能性も

使用する化粧品を一つでも減らしてみることや、メイクをしない日を作ることでメイク落としを省くなど、できるだけシンプルなスキンケアを心がけると良いでしょう。

美肌菌を守るための生活習慣3つ

美肌菌を育てるためには、日々の積み重ねが大切です。生活習慣で意識すると良いことをご紹介します。

1.睡眠

睡眠不足や睡眠の乱れは、血行や代謝を悪化させ、様々な健康トラブルを引き起こすと考えられます。

寝不足が続いてなかなか疲れが取れなかったり、日中に受けたダメージを翌日以降も持ち越してしまうのは、お肌も同じですね。

就寝前にはなるべく部屋を暗くしておいたり、リラックスできるアロマを用意しておくなど、睡眠環境の見直しをしてみるのもおすすめです。

2.運動

運動をして汗をかくことが美肌菌を増やすことに繋がると聞いて、意外に思う方もいらっしゃるかもしれません。

美肌菌は皮脂や汗をエサにして増え、保湿成分と抗菌成分を作り出す性質があるため、汗は美肌菌にとって最高のご馳走と言えます。

ヨガやストレッチなどで軽く汗をかいてから寝ると、美肌菌を育てることに繋がるということもわかっています(※4) 日頃から身体を動かし、汗をかく習慣を持つことを心がけると良いでしょう。

3.食事

美肌菌を育てるために、食事のバランスにも気をつけたいですね。

高GI値の食品に偏りすぎると皮脂分泌を過剰に増やして毛穴の詰まりの原因になったりと、悪玉菌優位な腸内環境になりがちに。

そうなると、善玉菌的な働きをしてくれていた日和見菌が悪玉菌的な働きをしてしまうなど、肌にとっても良くない影響が出てしまう可能性があります。 バランスのいい食生活で腸内環境を整えることは、美肌を作る上でとても大切なことと言えます。

美肌菌を正しく知り、健康的な美肌に

美肌菌にまつわる間違った情報や噂、思い込みについて解説しました。

美肌菌は、誰の肌にも存在し「美肌のもと」となる、いわば天然の美容エッセンス。 美肌菌を育てることは、自分を労わることでもあるかもしれません。どうか自分を労わることの心地よさを実感しながら、美肌菌を意識してみてくださいね。

参考文献:
(※1)東京医療保健大学ホームページ ヘルスケアコラム「皮膚の常在菌について」
(※2)鈴木修一ほか. 乳児期の黄色ブドウ球菌の皮膚定着とアトピー性皮膚炎の発症. 日本アレルギー学会誌. 2009. 23巻 1号 p56-61
(※3)宮野直子. 界面活性剤の皮膚常在菌への影響. 大阪府立公衆衛生研究所報. 2009. 研究報告第47号
(※4)書籍「化粧品やめたら美肌菌がふえた!」著・出来尾格

記事の監修

株式会社KINS代表、菌ケア専門家
下川 穣

岡山大学歯学部を卒業後、都内医療法人の理事長(任期4年3ヶ月)を務める。クリニック経営を任されながらも、2,500名以上の慢性疾患に対する根本治療を目指した生活習慣改善指導などを行う。
医療法人時代の日本最先端の研究者チームとのマイクロバイオーム研究や、菌を取り入れることによって体質改善した原体験をきっかけに菌による根本治療の可能性を感じ、2018年12月に株式会社KINSを創立。2023年8月にシンガポールにて尋常性ざ瘡(ニキビ)に特化したクリニックを開院。

INSTAGRAM : @yutaka411985 ,  @yourkins_official
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