菌をきちんと編 #020

界面活性剤があなたの肌に及ぼす影響と上手な付き合い方

 

 

私たちの身の回りでは洗剤やシャンプーだけでなく、メイクアップ化粧品など至るところに界面活性剤が使われています。ただ、界面活性剤について「何だか肌に悪そう」「なるべく使いたくない」と思っている方も少なくないでしょう。

 

最近では「界面活性剤フリー」のコスメも増えてきていて、「界面活性剤は怖いもの」というイメージが強くなってきています。


確かに、お肌のことを考えると界面活性剤はなるべく避けたい成分であり、とくに美肌菌にとっては大敵です。ただ、汚れを落とすため、摩擦を減らすためなど、決してデメリットばかりではありません。界面活性剤が使われているのにはそれなりの理由があるのです。


大切なことは界面活性剤の特性を良く理解して、上手に付き合っていくことです。では、どうしたら界面活性剤と上手に付き合っていけるのでしょう?

 

界面活性剤が利用されている理由、天然と合成の違い、菌への影響、さらには種類と正しい使い方まで一緒にご紹介します。



 

 

界面活性剤がなぜ化粧品に必要なのか?

 

界面活性剤とは、本来は混ざり合わない「水」と「油」を混ざり合わせる作用を持つ物質の総称のことをいいます。


具体的には分子中に水と混ざり合う部分(親水基)と、油と混じり合う部分(新油基)の両方を持ち合わせ、水と油の境界面を変える作用を持っています。


界面活性剤がとくに良く使われているのは、石けんや洗剤、クレンジングなどの洗浄剤です。水だけでは落ちない油汚れ、メイク汚れなどは界面活性剤の力を使って落とす必要があります。そのため洗浄剤にとって界面活性剤は欠かせない存在です。


ただ、気を付けるべきなのは、化粧品にも多くの界面活性剤が使われているということです。「こんなものにも?!」と思うような化粧品にも入っていることがあります。では一体なぜ化粧品にも界面活性剤が使われているのでしょうか?


それは洗浄以外にも界面活性剤にはさまざまな効果があるためです。



化粧品に含まれる界面活性剤の主な役割



①乳化作用

水分と油分を乳化させて製品の安定性を保つために乳化剤として使われることがあります。例えば、乳化剤としては乳液、液体ファンデーションや日焼け止めなど、長期間使う製品に配合されています。

 

 

②浸透性を高める作用

界面活性剤は皮膚の浸透性を高める効果もあります。美容液や化粧水などに含まれる美容成分が皮脂膜、角質層に浸透しやすくなります。



化粧品の安定性を保つため、美容成分の浸透を促すためなどの理由で界面活性剤が使われているのです。


ただ、使い方によっては界面活性剤はお肌の負担になってしまいます。肌への負担を最小限に抑えるためにも、界面活性剤の特性について理解を深めておきましょう。



 

天然と合成の違い



まず、界面活性剤の特性を知って正しく付き合っていくためには、「天然」か「合成」かという基本を知っておくことが大切です。


一般的に「天然」は肌にやさしい、ナチュラルだから体にいい、といったイメージを持つ方が少なくありません。しかし、界面活性剤については「天然」も「合成」も使い方次第で肌にダメージを与える原因になります。


天然界面活性剤:もともと自然界に存在している成分。サポニン、レシチン、ペプチドなど。


合成界面活性剤:人工的に合成した成分。ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Naなど。


化粧品や洗浄剤に使われているのは、合成界面活性剤が主流です。安価に大量生産できること、洗浄効果が優れているなどの理由から、合成界面活性剤が使われることが増えています。


実は「石けん」も界面活性剤の一種です。「石けん成分=安全、天然」と思われる方も多いかもしれませんが、界面活性剤には変わりありません。種類にもよりますが脱脂力が意外と強く、アルカリ側に傾いているために皮膚トラブルの原因となることがあります。

 

 

弱酸性と弱アルカリ性の違い

 

「弱酸性だから肌に優しい」「弱酸性ソープ」といった言葉を聞いたことはありませんか?弱酸性の方が肌に優しいと言われているのはなぜなのでしょうか?


健康な皮膚がもともと弱酸性であり、逆にアトピー性皮膚炎など皮膚トラブルがある場合はアルカリ側に傾いています。

 

健康な皮膚であればアルカリ性の石けんで洗ったとしても、すぐにpHが戻る力があるため大きな問題にはなりません。しかし、正常な機能が弱っている皮膚では弱酸性に戻る力が不足しているため、弱酸性に戻ることができません。


皮膚はアルカリ性に傾いているとバリア機能が弱まってしまい、皮膚トラブルを起こしやすくなります。そのため、肌トラブルがある人は、なるべく弱酸性のもので洗った方が良いとされています。


そして、美肌菌である表皮ブドウ球菌やアクネ菌は脂肪酸を生成することで皮膚のpHを弱酸性に保つという大事な役目を持っています。健康な皮膚を作るためにも、洗いすぎを避けて美肌菌を守ることが大切なのです。



 

お肌の「菌」にとって、なぜ界面活性剤が悪いのか

 

界面活性剤は肌にさまざまなダメージを与えることが分かっていますが、菌に対してどのような影響を与えるのでしょうか?



①美肌菌の住処を壊してしまう。

角質層は表皮の最も外側にある皮膚の層であり、水分蒸発を防ぎ、外からの刺激物質を防ぐバリア機能を持っている大切な組織です。美肌菌はこの角質層の表面と角質細胞同士のすきまに住みついています。


美肌菌は皮脂を分解して生み出した成分で肌にうるおいを与えたり、脂肪酸を放出してpHを弱酸性に保つなど、肌を健やかに保つ優れた効果を持っています。


菌というと悪いイメージがあるかもしれませんが、美肌菌が一定以上住んでいる方が肌状態が良いことが分かっています。


美肌菌と相性の良くない成分としては、アルコールや防腐剤、そして界面活性剤があります。界面活性剤は美肌菌が住んでいる’’おうち’’でもある角層を壊してしまうのです。


例えば、皮膚に浸透させるタイプの美容液や導入液などには界面活性剤が含まれていて、美容成分の浸透を高めている場合があります。使った瞬間は調子が良いかもしれませんが、大切な美肌菌を減らしてしまっている可能性もあるので使いすぎに気をつけましょう。


美肌菌のヒミツを詳しく知りたい方はこちら。

美肌菌とは?化粧品に負けないスキンケア効果を菌の専門家が解説
キーワード:美肌菌

 

②脱脂力が強いため、菌の邪魔をしてしまう。

界面活性剤は油を浮かせて流すことで、汚れやメイクなどを落とす洗浄効果を発揮します。それと同時に必要な皮脂まで落としてしまうので、皮膚の乾燥を引き起こして美肌菌にも影響します。


美肌菌は皮脂をエサにして増えていきます。しかし、界面活性剤を含んだ洗顔や石けんで皮脂を洗いすぎてしまうと、大切なエサが無くなってしまう、つまり住みづらい環境になってしまうのです。そのため洗いすぎないこと、適度に皮脂を残すようにすることが、美肌菌を育てるためには大切なポイントです。


顔のテカリに悩んでいる方はこちらの記事をチェック。

お肌のテカりを解消するためのたった一つの方法は「洗いすぎない」こと
キーワード:皮脂

 

③種類によっては殺菌作用を持つタイプもある

界面活性剤の種類によっては、洗浄や乳化だけでなく殺菌作用を持つタイプもあります。

 

「陽イオン性界面活性剤(カチオン系)」はプラスイオンに帯電して、優れた殺菌作用があることが特徴です。例えば、塩化ベンザルコニウムは殺菌成分として知られ、消毒薬の主成分にも用いられる陽イオン性界面活性剤の一種でもあります。


殺菌作用があるということは悪い菌だけでなく良い菌まで死んでしまう可能性があるということです。良い菌も悪い菌も両方ともバランスよく存在していることが美肌を維持するためには大切です。

 

そのため、界面活性剤だけでなく防腐剤もなるべく使わない方がお肌にとっては優しいということになります。



合成界面活性剤の種類と強さ



界面活性剤にもさまざまな種類があり、強さも異なります。全ての界面活性剤を避けないといけないわけではありません。


では、どんな界面活性剤であれば皮膚に優しく、菌へのダメージも最小限に抑えることができるのでしょう。具体的な種類と洗浄力の強さについてご紹介します。

 

 

陽イオン界面活性剤

電気を帯びている界面活性剤は皮膚への刺激が強い傾向があります。陽イオン界面活性剤は水に溶けるとプラスの電気を帯びる性質があり、潤滑、柔軟、殺菌の効果に優れています。


主にヘアトリートメント剤や柔軟剤などに使われますが、一部の種類は殺菌剤や防腐剤としても使われています。


界面活性剤の中では最も殺菌作用が強いタイプで、皮膚への刺激も強めになります。人間の皮膚表面はマイナスに帯電した生体膜で覆われているため、逆の性質を持つ陽イオン界面活性剤はとくに刺激を起こしやすくなります。



例)塩化ベンザルコニウム、ベヘントリモニウムクロリド

 

 

陰イオン界面活性剤

陰イオン界面活性剤は水に溶けるとマイナスの電気を帯びる性質があり、洗浄、気泡作用に優れています。最も生活に馴染んだ界面活性剤とも言えるでしょう。


洗浄力が強く、泡立ちが良いため、主に洗うことを目的とした石けん、洗剤やシャンプーなどの主成分として用いられています。

 

陽イオン界面活性剤と比べると皮膚刺激性は弱いですが、脱脂力の強さは種類によって異なります。例えば、アミノ酸系、カルボン酸系と呼ばれるタイプのように、敏感肌や乾燥肌の方でも使いやすいタイプもあります。



例)ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Na、オレフィン(C14-16)スルホン酸Na など

 

 

両性イオン界面活性剤

マイナスとプラスの両方の性質がありますが電気的には中和されているため、比較的マイルドな作用をもたらす界面活性剤です。皮膚刺激性は低く、酸性では柔軟剤、アルカリ性では洗剤とpHによって性質を変えます。


洗浄力が弱いのでベビーシャンプーの成分として用いられたり、単独ではなく他の界面活性剤の洗浄力や皮膚刺激性を調整するために使われることも多いタイプです。


例)コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ココアンホ酢酸Na、レシチンなど

 

 

非イオン(ノニオン)界面活性剤


界面活性剤の中で唯一電気を帯びないタイプであり、毒性や皮膚刺激性がほとんどありません。乳化、可溶化、洗浄、気泡の作用がありますが、洗浄力は弱いため洗浄目的で配合する場合には他の界面活性剤と合わせて用いられることがほとんどです。


主に、化粧品、食品添加物の乳化剤、洗浄助剤として用いられます。非常に皮膚に対する刺激がマイルドなため、スキンケア製品やメイクアップ製品にも繁用されています。


例)アルキルグルコシド、ラウラミドDEA、PEG-◯水添ヒマシ油、ラウレス-◯ など




界面活性剤との上手な付き合いかた

 

界面活性剤にはさまざまな種類があることがお分かりいただけたかと思います。使い過ぎは良くないとはいえ、界面活性剤を完全に避けることは難しくなっています。では、毎日の生活の中では、どのように界面活性剤と付き合っていけば良いのでしょうか?



①肌質や目的に合わせて界面活性剤を選ぶ

市販品に使われている界面活性剤は基本的には毒性や安全性を確認された成分です。しかし、肌が弱い方や、アトピーの方、乾燥肌の方などは肌トラブルの原因となることもあります。

 

また、健康な肌の人であっても強い界面活性剤を使い続けることで、角層に住んでいる美肌菌の邪魔をしてしまい、肌トラブルの原因となることもあります。


そこで、まずは毎日使うボディーソープやシャンプーなどから、優しいタイプの界面活性剤に変えてみるとよいかもしれません。例えば、洗浄力がマイルドなアミノ酸系やカルボン酸系の界面活性剤、皮膚へのダメージが少ない非イオン界面活性剤を選ぶ、ノンカチオントリートメントを選ぶなどの工夫ができます。

 

豊富にある選択肢の中から、ご自分に合ったものを上手に使い分けていくようにしましょう。




②界面活性剤を使った化粧品は最低限に留める

洗うことを目的にした場合には、界面活性剤を使うことはやむを得ないところがあります。「不要な汚れは落とす」そして「皮脂を落とし過ぎない」、このポイントを押さえておきましょう。



・界面活性剤入りのアイテムを何種類も使用する
・肌に長時間触れるもの(ファンデーションや日焼け止めなど)に界面活性剤が入っている
・肌に最初につけるもの(化粧水や導入化粧液など)に界面活性剤が入っている


    以上に当てはまるものがあれば、製品を見直すか、使う頻度を減らすなどの工夫から始めてみましょう。


    とくに肌荒れに悩んでいる、肌の乾燥が気になるという方は、界面活性剤の有無や使い方を見直ししてみてください。


    最近では、種類やメーカーによって、界面活性剤フリーのコスメも増えています。必ず購入するときに化粧品のラベルをチェックする、手元にある化粧品の成分を知っておくなど、界面活性剤が原因で肌トラブルを起こすことのないよう気をつけていきましょう。



    ③やみくもに避けることにもデメリットがある

    界面活性剤が怖いからと過度に避け過ぎることが肌トラブルの原因になることもあります。


    例えば、皮脂分泌が多い人が洗浄力の弱いタイプの界面活性剤を使ってしまうと、かえって残った皮脂が肌トラブルの原因になってしまうなどです。


    また、皮膚に優しい界面活性剤だからと安心して大量に使ってしまう、ゴシゴシと擦ってしまうことも良くありません。界面活性剤よりも摩擦が肌の負担になってしまっては意味がなくなってしまうからです。


    汚れの強さやメイクの濃さ、さらに肌質に応じて界面活性剤を上手に使い分けていきましょう。



    ④界面活性剤に頼り過ぎないことも大事

    「濃いメイクをしっかり落としたい」、「皮脂を落としてさっぱりしたい」などの理由で、界面活性剤の洗浄力に頼ってしまう人も多いかと思います。

     

    肌トラブルがなければ良いかもしれませんが、何かしらの肌トラブルや皮膚の乾燥感などを感じるという場合は、そもそもの原因を見直していくことが大事です。


    例えば、お湯でオフできるマスカラ、石けん落ちタイプなど落としやすいメイクに変えることも方法の一つです。


    強い界面活性剤を必要としないメイクに変えることで、結果的に界面活性剤によるダメージも最低限に抑えることができます。

     

     

    ⑤皮脂のコントロールは食生活から見直すことも必要

    皮脂分泌が多いというお悩みがあるならば、落とすことだけではなく、皮脂の分泌を抑えることも同時に目指しましょう。

     

    皮脂の過剰分泌はお食事が関係している部分もとても大きいのです。皮脂分泌は肌バリアのためには必要ですが、過剰になると肌トラブルの原因にもなります。


    とくに過剰な皮脂分泌を促してしまうのが甘いもの、精製された白砂糖など血糖値を上げやすいもの(高GI食品)です。血糖値が急上昇するタイミングで皮脂が多く分泌されることが論文でも報告されています。(参考文献) インナーケアも同時に見直すようにしましょう。


    菌の邪魔をし肌荒れを引き起こしてしまう食べ物については、こちらの記事で詳しくまとめているので参考にしてみてください。

     

    菌の邪魔をする避けるべき食品リスト
    キーワード:菌ケア三箇条

     

    界面活性剤についてご説明しましたが、いかがでしたか?

     

    界面活性剤の特性が見えてくると、少し付き合い方も分かってくるかと思います。過度に怖がることはありませんが、使い方次第では肌トラブルの原因となることもあります。

     

    ぜひ、上手に界面活性剤とうまくお付き合いしていき、美しく健康な肌を手にいれていただければと思います。



    参考文献:
    ・Robyn Smith, 
    A pilot study to determine the short-term effects of a low glycemic load diet on hormonal markers of acne: a nonrandomized, parallel, controlled feeding trial, Mol Nutr Food Res. 2008 Jun;52(6):718-26.

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